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仮想通貨市場を飲み込んだ24時間 ― 190億ドル清算事件の全貌

作成日:2025年11月08日
最終更新日:2025年11月07日

0. 崩壊の序章 ― 忍び寄る「脆弱性の連鎖」

2025年10月10日、金曜の夜。 誰もが「ただの下落」だと思っていた。 だが24時間後、仮想通貨市場は史上最大の清算嵐に襲われた。

  • 清算総額:190億ドル(約2.8兆円)
  • 被害者:160万人以上

FTX崩壊を超える規模の“市場の断層”が突如として開いたのだ。 しかしこれは偶然ではない。 9月から積み重なっていた「火薬庫」に、最後のトリガーが火をつけただけだった。


1. 火薬庫を形作った5つのリスク

10月の嵐が来る前、市場はすでに危険水域にあった。 9月から10月初旬にかけて、以下の「脆弱性の連鎖」が形成されていた。

🏦 マクロ経済の不安定化と規制圧力

世界的な金融不安と、SEC・NYDFSによる規制強化の報に市場は怯え、 投資家心理は極端に冷え込んでいた。

📈 “Uptober”への過度な期待

SNSでは「10月は上がる」という根拠なき楽観論が拡散。 過剰なロングポジションが積み上がり、過熱したセンチメントが形成された。

🧨 DeFiの隠れレバレッジ爆弾

Perp DEXのエアドロ狙いでファーミングが横行。 DeFi全体のTVLは史上最高に達したが、その多くは“ポイント稼ぎ”のための 多重レバレッジによる張りぼての流動性だった。

🩸 枯渇する真の流動性

先物市場の拡大とは裏腹に、現物市場の板は薄く、 少しの売りでも価格が滑る不安定な状態だった。

💱 Binance USDeの歪み

Binanceで担保として使われるUSDeが、本家Ethena USDeとの乖離を起こしやすい設計。 市場の構造的脆弱性はこの時すでに存在していた。

見た目の活況(高TVL・Uptober期待)と、内部の空洞化(流動性枯渇・高レバレッジ) このギャップが、後の爆発を決定づけた。


2. トランプの一言が市場を揺らす

すべての始まりは10月11日5:50(日本時間)。 ドナルド・トランプ大統領がSNSでこう発表した。

「中国製品への追加関税100%。アメリカを再び守る時だ。」

金融市場は即座にリスクオフへ。 株式・債券が急反転し、暗号資産も連動して下落。 BTCはわずか数時間で $126,000 → $118,000 に。

本来なら「普通の調整」で済んだはずだった。 しかし、このマクロショックが“火薬庫”の中心で爆発したのだ。


3. オラクルの盲点を突く攻撃

11日早朝6時過ぎ、Binanceのスポット市場で異常な動きが検出された。 USDe、wBETH、BnSOLなどの担保トークンが突如暴落。 他取引所では価格は安定していた。 つまり、Binance内部だけが崩壊していたのだ。

攻撃者は“オラクル”の盲点を突いた。

オラクルとは? 取引所が担保評価や清算を行う際に参照する価格データ。 Binanceは自社のスポット市場だけを参照しており、 外部価格を考慮しない単一依存設計だった。


4. 6000万ドルで190億ドルを動かす

攻撃者は約6000万ドル分のUSDe・wBETH・BnSOLを短時間で売却。 薄い板のため、以下の異常値を記録した。

  • USDe:$0.65(-35%)
  • wBETH:$430(-89%)

Binanceのオラクルはこれを“正しい市場価格”と誤認。 担保評価が急落 → 担保不足 → 連鎖的清算が発生

Unified Account(統合アカウント)機能が 全ポジションを同時に巻き込み、止まらない清算ループが始まった。


5. 効率化が招いた地獄

Unified Accountは「複数ポジションを1つの口座でまとめて管理できる」便利な機能。 だが、裏を返せばそれは “防火壁の喪失” でもあった。

  • 担保資産が共通化
  • マージンが共通化
  • 一資産の暴落が全ポジションに波及

結果: USDeの誤暴落 → 担保不足 → BTC・ETH・SOLが一斉清算 → 清算売りが価格をさらに押し下げる。

清算が清算を呼ぶ「自己増殖型フラッシュクラッシュ」が起きた。


6. たった数時間で世界が崩れた

UTC出来事市場反応
16:50トランプが100%関税発表BTC急落開始(マクロトリガー)
21:14USDe・wBETHが暴落オラクル誤作動(技術的トリガー)
21:20Unified Accountが担保評価を更新清算連鎖トリガー発火
22:00ATOMが$0.001に急落板が消滅、取引不能状態
23:00清算総額 $190億到達160万人が巻き込まれる

USDE/USDT 1m
WBETH/USDT 1m
BNSOL/USDT 1m


7. 市場を殺したのは人ではなく機械

Binanceのリスクエンジンには「異常値検出機能」がなかった。 オラクル価格が急変しても“市場異常”として無視する仕組みがなかったのだ。 さらに清算判定は即時執行。 AIでも人でも止めることはできなかった。

機械が市場を殺す瞬間が、こうして訪れた。


8. 仮想通貨市場の敵は外ではなく、中にいる

この事件は、攻撃者が市場を壊したのではない。 市場が、自らの設計ミスで自滅した。

  • Binanceのシステム脆弱性
  • 市場参加者の過信
  • マクロショック

どれも単体では致命的ではなかったが、同時発生にシステムは耐えられなかった。

「あなたは、自分が触っているシステムを本当に理解しているか?」

この問いに正面から答えられる者だけが、次の相場を“理解して生き残る側” になる。